三つの温度計を一つの数値に
暑さ指数(WBGT、湿球黒球温度)は、1950年代に米国の軍隊で訓練中の熱中症を減らすために作られた指標です。以来使われ続けている理由は、気温では表せないものを表しているからです。日陰にいるか日なたにいるかの違いです。
| 温度計 | 反応するもの | 屋外 | 屋内・日陰 |
|---|---|---|---|
| 自然湿球温度 | 湿度、風、湿った布に当たる日射 | 0.7 | 0.7 |
| 黒球温度(直径15cm) | 放射熱。上からの日射、下からの地面の熱 | 0.2 | 0.3 |
| 乾球温度 | 日陰の気温 | 0.1 | — |
重みが偏っているのは理由があります。人が熱を逃がす主な手段は汗の蒸発で、それがどこまで効くかを表すのが湿球温度です。そして黒球の0.2が、この指標を気温と決定的に違うものにしています。強い日射の下では、黒球温度は気温より20〜30℃高くなります。
なお「湿球温度」と書かれていても、暑さ指数のなかで使われるのは自然湿球温度です。日陰で通気させた湿球温度とは別のもので、日射と風が当たるぶん高い値になります。この区別が ISO 7243 の読み違えで最も多いところです。詳しくは湿球黒球温度の仕組み。
気温との違いを数字で
同じ気温32℃の二つの日
- 湿度40%、風速3m/s
- 暑さ指数約28℃—厳重警戒の下端
- 湿度80%、風速0.5m/s
- 暑さ指数約32℃—危険
これが、天気予報の気温だけでは判断できない理由です。
四つの段階
| 段階 | 暑さ指数 | 日常生活における目安 |
|---|---|---|
| 注意 | 25℃未満 | 一般に危険は小さいが、激しい運動では危険が残る。 |
| 警戒 | 25〜28℃ | 運動や重い作業では定期的に休憩をとる。 |
| 厳重警戒 | 28〜31℃ | 外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意。 |
| 危険 | 31℃以上 | 外出はできるだけ避け、涼しい室内に移動する。 |
同じ数値に対して、目的の違う区分が複数あります。混同しないように整理すると次のとおりです。
- 日常生活 —上の四段階。日本生気象学会の指針。
- 職場 —暑さ指数28℃または気温31℃が措置義務の線。作業強度ごとの基準値は別に定められています。 職場の熱中症対策義務化と WBGT 基準値
- 運動 —日本スポーツ協会の運動指針。31℃以上で原則中止。 熱中症予防運動指針の読み方
- アラート —暑さ指数33が熱中症警戒アラートの基準。 熱中症警戒アラートとは
公表値と推定値
これは実務上いちばん大事な区別です。
| 種類 | 出どころ | 使える場面 |
|---|---|---|
| 実測値 | 認証された指数計による測定 | 基準に照らした判断、記録が必要な場面 |
| 公表値 | 環境省が地点ごとに公表する実況値・予測値 | その地域の目安、前日からの計画 |
| 推定値 | 気象データから計算したもの | 計画と気づき。実測が必要な日かどうかの判断 |
気象データから暑さ指数を出しているアプリやサイトは、例外なく放射の項を推定しています。日射量が気象データに含まれていないためです。このサイトの計算ツールも推定であり、値ごとにそう書いてあります。そして高温・低湿・無風の条件では、この種の推定は最大2℃程度低めに出ることが知られています。
公表値の読み方は公表されている暑さ指数の読み方に、指数計との違いは英語のページ App or WBGT meter にまとめています。