三つの温度計

それぞれの設置条件と、反応するもの。右端は気温32℃・湿度60%・弱い風・夏の高い日射での推定値。
温度計設置反応するもの値の例
乾球温度日陰、通気気温だけ32℃
湿球温度日陰、通気、濡らした布気温と湿度26℃
黒球温度直径15cmの黒い球の中心、屋外放射熱と風52℃

差の大きさが要点です。同じ場所で、一方の温度計が26℃を指し、もう一方が52℃を指しています。「気温」という一つの数値では、この状況を説明できません。

乾球と湿球の関係

この二つが揃うと湿度が決まります。乾湿計(psychrometer)が二本の温度計だけで湿度を測れるのはそのためで、 19世紀からの方法です。

差が大きい=乾いている、差が小さい=湿っている。差がゼロなら湿度100%です。

黒球が別物である理由

黒球は、他の二つが設計上避けている放射を測ります。

放射は空気の温度とは独立しています。よく晴れた日、日なたに立っている人が受けている熱の多くは、気温ではなく上からの日射と下からの地面の放射です。黒球はその負荷を一つの温度として表します。

同じ空気、日なたと日陰

乾球温度
どちらも32℃—空気は同じ
湿球温度(日陰・通気)
どちらも26℃
黒球温度、日なた
52℃
黒球温度、日陰
32℃前後
4℃ 0.2 の重みしかないのに、暑さ指数はこれだけ変わります。だから基準は気温ではなく暑さ指数で書かれています。

屋外と屋内で式が変わる

重みの違い。屋内・日陰では乾球の項がなくなります。
自然湿球黒球乾球
屋外(日射あり)0.70.20.1
屋内・日陰0.70.3

直射日光がない場所では、黒球はもはや日射を測っていません。周囲の壁や天井からの放射を測っています。その負荷を評価する必要があるため、黒球の重みが増えて乾球の項が消えます。

自然湿球温度という別物

暑さ指数の式に出てくる「湿球温度」は、自然湿球温度です。日陰で通気させた湿球温度とは違います。

  • 湿球温度(psychrometric) —日陰、強制通気。気候の議論や湿球35℃の話に出てくるのはこちら。 英語のページで扱っています。
  • 自然湿球温度 —屋外に置き、日射と自然の風にさらす。暑さ指数の0.7の重みはこちらです。

同じ条件でも自然湿球温度のほうが高くなります。ISO 7243 や JIS Z 8504 を読むとき、この区別を取り違えると値が合いません。

なお、湿球黒球温度計そのものについてはこのサイトでは扱いません。測定機器は認証されたものが必要で、その選定は機器の側の話になります。指標としての暑さ指数と、測定機器としての指数計は別のものです。